Threadsでもたびたび話題に上がる、「水通しって必要なの?」という疑問。
特に、長く編み物を続けてきた方ほど、初めて耳にしたという声も多く見かけます。
実際、近年は「水通し」投稿が増え、それに対して
「わたし、知らなかった…」「流行なの?」「間違ってたの?」
と不安になるケースもあるようです。
結論からいえば――
どちらが正しい・間違いではなく、糸の種類が変わってきたから選択肢が増えただけ。
この記事では、なぜ近年水通しが注目されているのか、そして
「水通しが必要なケース/不要なケース」を整理していきます。
なぜ最近SNSで「水通し」という言葉を見るようになったのか

ここがいちばん誤解されやすいポイント。
水通しが“突然流行り始めた”わけではなく、糸の流通事情が昔と大きく変わったためです。
昔(〜2000年代くらい)
日本国内メーカーの糸がメインで流通。
日本メーカーの糸は、
- 精練が丁寧
- 色落ちしにくい
- 仕上げ工程が安定
という特徴があり、水通し不要でスチーム仕上げだけで十分きれいに整うことが多かった。
今(現在)
取り扱える糸の種類が爆発的に増加。
- 海外メーカーの糸(特にハンドダイ)
- 工業糸の小売り
- リサイクル繊維を混紡した糸
- 色止め(フィクセーション)が弱い/されていない可能性がある
など、糸ごとの個体差が大きくなりました。
こうした糸は、
お湯や中性洗剤に触れさせることで本来の柔らかさが引き出されたり、余分な油分が落ちて風合いが安定したりするため、「水通し」という工程が役立つようになったわけです。
ちなみに海外で人気のブランド we are knitters の本にも、しっかり水通しの手順が掲載されています。
つまり「海外勢には昔から普通にある作業」なんですね。
参考は当記事の最後にまとめてあるので、興味がある方は覗いてみてください。
ベテランさんがざわつく理由

Threadsを見ていると、長年編んでいる方ほど
「水通し知らなかった…」
「時代遅れ?」
と不安になってしまっているようです。
でも大丈夫。
昔は“必要がなかった”だけ。誰も間違っていません。
よく見られる声に対して、それぞれ補足すると…
「流行じゃないの?」
→確かに見た目は流行っぽいけれど、本質は“糸の多様化への対応”。
「わたしはスチームだけで習ったし、教科書にも書いてない」
→その通り。日本の糸事情に合わせた正しい指導でした。わたしの本にも載ってません。
「時代に取り残された?」
→新しい糸環境に合わせた知識が増えただけ。今知ったならもう取り残されてません。
どちらかが「正しい」「間違い」ではなく、糸が変われば必要な工程も変わるというだけの話です。
水通しが“必要な場合”/“不要な場合”
では水通しが必要か不要かはどう判断すればよいのでしょうか。
ということで簡単にまとめました。
水通しした方が良い糸
- ハンドダイ(手染め)糸
- 海外メーカーの糸
- 工業糸
- リサイクル混紡の糸
- 触った時に油分・糊・ワックス感を強く感じる糸
- 編地が固い・ごわつく糸
→水に通すことで本来の風合いが出たり、サイズが落ち着いたりします。
水通ししなくても良い糸
- 日本メーカーの一般的な毛糸(並太・合太など)
- 色止め・精練がしっかりしているもの
- すでに十分柔らかく、仕上がりに問題がないもの
- スチームで美しく整う編地
→これまで通りでOK。特に問題ありません。
まとめ:水通しは「最近の習慣」ではなく「糸に合わせた選択肢」
水通しは、編み物の“正しさ”を測る基準ではなく“新しい糸の種類”に合わせた仕上げ方法の一つというだけ。
昔のやり方が間違っていたのではなく、素材の幅が広がったことで、選び方が増えたというだけです。
「知らなかった」は当然で、「今知ったからこれから選べる」それだけで十分。
編み物は、経験値がある人ほど柔軟にアップデートできる世界。
必要な場面では水通しを、不要な場面ではスチームだけを。
これからもあなたの作品がさらに素敵に仕上がるよう、糸に合わせて自由に選んでくださいね。
参考
・We Are Knitters(海外ニットブランド) — 湿式ブロッキング(水通し)について公式に方法を公開している。 we are knitters
・KNITLAB(日本の編み物サイト) — 手編み作品の「縮絨/水通し」の仕上げ方法について、糸の油分や洗いの必要性を含めて丁寧に説明している。 丸安毛糸株式会社
・Soak(海外・ニット用洗剤/ケア用品ブランド) — 湿式ブロッキングの手順を紹介しており、特に手染め(ハンドダイ)糸などを使ったニット作品に対する水通しの有用性を示している。 Soak Wash Inc.
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作品や糸によっては、「実際にどう水通しするの?」と手順を詳しく知りたい場合もあると思います。
モヘアを例にしていますが、水通しの基本的な流れはどの糸にも応用できます。
具体的な水通しの手順はこちらにまとめています:

