ずっと探していた、理想の「赤」。
ノルウェーの老舗メーカー、Sandnes Garn(サンネスガルン)の糸で以前に編んだ時、もう一度このブランドの糸で編みたいと思っていました。
今回選んだデザインは、職人という意味を持つ『Artisane Cardigan』。
デザインを始めてみた時「あ!これだ!」と思ったものの、提案されているカラーはちょっと自分に似合わない。
このデザインをわたしに似合わせるなら「絶対に赤!」と思い、理想の赤を表現するためにあれこれ考えたり、難解な技術に再会したりと、学びが多い1着になりました。
Artisane Cardiganってどんなパターン?
Artisane CardiganはSandnes 2308, DIY (Vol 1) に掲載されています。
わたしは書籍で持っていますが、Ravelryでパターンの単体購入が可能です。

日本語パターンは基本なし!特別な条件でのみ購入可能
このパターンの日本語版はk2tog yarnさんで条件付き販売されていました。
その条件とは・・・
- Sandnes 2308, DIY の購入履歴が必要
- 日本語パターン単体では買えない
しかし現在すでに取り扱いは終了しています。
ただ、日本語パターンでもわからない部分はあるので、原文の英語で確認したり、chatGPTで訳し直したりしました。
うまくプロンプトを書くとかなり精度の高い日本語訳ができるので、chatGPTなどAIを利用するのもいいと思います。
もしchatGPTで訳すならば、“編み物のパターンであること”を明示する様にしましょう。
また合わせて英文パターンハンドブックを活用することをおすすめします。
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「どうしても赤で編みたい」から始まった糸探し

Artisane CardiganはK2togyarnでキット販売されていたのですが、編みたい色ではありませんでした。
代用糸を考えたのですが、Sandnes garnの糸は大好きなんです。
でも、どうしても「赤で編みたい!」って思っていて、Sandnes Garn Double Sundayのカラーラインナップ自体に赤系はそれなりにあるのですが、K2togyarnでは取り扱いなし。
そもそもSandnes Garn Double Sundayの赤系は、微妙にわたしが欲しい赤ではなく…
- 朱色っぽい赤
- ちょっと暗い赤
この 中間が欲しい。
そこで考えたのが↓の方法。
■ Tynn Silk Mohair を引き揃えて“乗算”を狙う
暗い赤を明るい印象にしたい場合、または逆に、明るすぎる色に落ち着きを与えたい場合でわたしがよく使う方法があります。
それは引き揃えのモヘアの色で調整する方法です。
というわけで今回は
- Double Sunday の少し暗めの赤
- Tynn Silk Mohair の少し明るめ(ポピーレッド系)
この2本を引き揃えてオーバーレイ(乗算)効果で理想の赤を作る作戦にしました。
K2togyarnに欲しい色番を伝えて、入荷予定を問い合わせ予約購入という対応をしていただきました。

編み方はトップダウン−かんたんに見えて随所に難関あり
全体的な編み方の構成は、トップダウンで身頃を編み後ろ身頃と表身頃が編み終わったら右前身頃から後身頃を通り、左身頃まで目を拾い2ゴム編みをします。
脇下をすくいとじして、袖の目を身頃から拾い袖を編み、袖口は二目ゴム編み。
前立ては身頃から目を拾い、別針でItalian COで作りをしたらダブルニッティングで身頃の拾い目を二目一度をしながら編む。
最初に目を通した時点で「これは難関だな」と思ったのは、イタリア式ふせ止め(Italian BO)と、前立ての全体的な編み方。
Italian BO? 二目ゴム編み止めじゃないの?
さて、第一の難問です。
日本語パターンには
イタリア式伏せ止め
でも原文はただの “Italian cast-off”(=Italian BO)。
私、これ前に Amy Slipover でもつまずいてて、その時は結局、
「まあ二目ゴム編み止めでいいか」
とふつうの二目ゴム編み止めで処理しました。
今回こそちゃんとやろうと思って、ChatGPTにも聞いてみたら衝撃の事実。
■ Italian cast-off(=Italian BO) には2種類ある
Italian BOについて手持ちの作り目とふせ止めばかりを集めた本で改めて調べました。
その本がこちら↓
この本には
一般的に「一目ゴム編み止め」と呼ばれている止め方です
とあります。
※今回は二目ゴム編みしているので、二目ゴム編みにすると解釈できる。
ぜったいにこのパターンの場合は違うでしょ…。
と思ってChatGPTに聞いたらこの様に二つの方法があるとのこと。
- ただの「二目ゴム編み止め」を指す場合
- 準備段ありのふっくら仕上げ
つまりどちらの方法を取るのかは、パターンの文脈から判断するらしい。
今回のパターンは準備段があるので、2のふっくら仕上げが正解。
つまり今回も Amy Slipover も「準備段あり」のタイプだったっぽい。
がんばったけど準備段で心が折れる
今回はパターンどおり、身頃の裾で Italian BO に再チャレンジするも
- 準備段の意味が分からない
- 針を2本使う構造が理解できない
で、どうしても年内に仕上げたい気持ちが強くて、悩むことをやめて自分ができる二目ゴム編み止めをすることにしました。
この時点ではまだ「まあいっか」って思ってました。
このときは…。
この続きは後編で
身頃の裾では結局「まあいっか」と二目ゴム編み止めで終わらせてしまった私だけど、前立てを編み始めた瞬間、その選択が間違いだったと気づくことになる。
なぜ Sandnes Garn はここまでして “Italian BO” にこだわるのか。
糸を切る理由、見たことのない前立ての構造、そして Italian BO の正体が Tubular BO だと理解した瞬間――。
後編では、前立ての編み方を図解つきで追いながら、「Italian BO(ふっくら仕上げバージョン) が必要だった本当の理由」を掘り下げます。
