「2本の糸を引き揃えて、自分だけの可愛い編み地を作りたい!」
異なる素材や色の糸を組み合わせて編む引き揃え(2本以上の糸を一緒に編む技法)って楽しいですよね。
自由に組み合わせることで、市販糸にはない表情豊かな編み地を楽しめるのが魅力です。
SNSなどを見ていると、編む前に2本の糸を家庭用の玉巻器や手巻きで1つの糸玉にまとめてから編んでいる方を見かけることがあります。
一見すると、糸玉が転がらず扱いやすそうに見えます。
しかし、多くの経験者やデザイナーは、引き揃え糸は別々の糸玉から編む方法をすすめています。
今回は、なぜ家庭で引き揃え糸を事前に1つの玉へ巻かない方がよいのかを、糸の性質や物理的な理由、そして実際の経験談やアドバイスをもとに解説します。
引き揃え糸を事前に1つの玉へ巻かない方がいい理由

理由① 糸の「伸縮率(弾性)」が違うから
引き揃えの定番といえば、ウール(Fingeringなど)+シルクモヘヤ(Lace)の組み合わせです。
この2種類の糸は、見た目は似ていても性質が異なります。
- ウール:弾力があり、引っ張ると伸びやすい
- モヘヤ(芯糸のシルクやナイロンなど):比較的伸びにくい
この状態で2本を一緒に引っ張りながら玉巻きすると、伸びやすいウールだけがわずかに伸びた状態で巻き取られることがあります。
その後、編むときにウールが元の長さへ戻ろうとすると、伸びにくい方の糸が余り、ループ状に飛び出したり、糸がたるんだりする原因になる場合があります。
理由② 「内外周の差」と「ねじれ」が生まれるから
2本の糸を1つの玉へ巻くと、糸玉のカーブによって、片方がわずかに外側、もう片方が内側を通る場面が繰り返されます。
この小さな差が積み重なることで、編み進めるうちに片方の糸だけが少し余ることがあります。


さらに、1つの玉から2本同時に糸を引き出すと、
- 糸同士が絡みやすくなる
- 一方の糸がもう一方へ巻き付く
- 不要なねじれが入りやすくなる
といったことも起こりやすくなります。
その結果、テンションが一定に保ちにくくなり、編み地へ影響が出る可能性があります。
実際の経験談やプロのアドバイス

ここまで紹介した内容は理論だけではありません。
実際に経験した国内外の先輩たちからのアドバイスを引用して紹介します。
糸の伸縮性の差によって片方だけが余る
海外の編み物コミュニティRedditでは、「2本を事前に1つへ巻くべきか」という質問に対して、次のような回答があります。
The mohair and yarn, probably merino? will most certainly ”feed” into your fabric at different rates. Balling them together means you will (probably) end up with long loops of mohair as you knit along. Keeping them apart prevents this very annoying problem.
(訳)
モヘヤと(おそらくメリノウールの)毛糸は、編んでいると編み地へ取り込まれる速度がどうしても異なります。2本をあらかじめ1つの玉へ巻いてしまうと、編み進めるうちにモヘヤだけが長くたるみ、ループ状になってしまうことがあります。2本を別々の糸玉から引き出して編めば、この厄介なトラブルを避けられます。
出典:Reddit r/knitting(Knitting with two yarn strands held together- winding preferences?? へのコメント)
こちらの回答が、前述した【糸の「伸縮率(弾性)」が違うから】で起こる現象です。
内外周の差によってループが大きくなる
Yahoo!知恵袋では、「違う種類のコーン巻毛糸を引き揃える場合、巻き直して毛糸玉を作ったりしなくてもいいのか」という質問に対して、次のような回答が寄せられています。
引き揃えて巻き直してはだめです、必ず手元で引き揃えて編みます。 やってみるとわかりますが、引き揃えて巻いてから編むと、ちょいちょい余ってくる糸が出てきたりするんですよ。
こちらの質問のように細い工業糸と違う種類のコーン巻毛糸を事前に巻いた場合、引き揃える糸の太さに差があれば、内外周に差が出てしまうのは想像がつきますね。
さらにこの質問への回答を辿っていくと、コーン巻きを複数引き揃える時に便利な道具を紹介してくれているので、そちらもとても参考になるので一度目を通すことをおすすめします。
引き揃え糸を事前に玉巻きするメリット・デメリット
では、実際に1つの玉に巻いた場合と、巻かずに別々の毛糸玉から引き揃えた場合、どのように差がでるでしょう。
という実験をされた方が海外にいました。
こちらはKnitting Paradise(ニッティング・パラダイス)という、海外の編み物愛好家が集まる、とても大きなオンラインコミュニティ(掲示板フォーラム)に投稿された
「Knitting with 2 yarns…leave as 2 or combine into one(2本の糸で編む場合…2本に分けたままにするか、1本にまとめるか)」
という質問に対する答えです。
Separate balls
Pro – if the two yarns have different stretchability (is that a word?) it’s easier to control the flow of each of them against each other
Con – the working strands can get tangled round each otherCombined balls
Pro – If the yarns are different colours/shades the mix will generally be more even than with separate balls
Con – take care when winding the two balls together as it’s easy to stretch one and you can end up with huge loops of the other yarn
(訳)
◾️別々の糸玉から引き揃える場合
メリット
糸ごとの伸縮性が異なる場合でも、それぞれの糸送りを調整しやすい。 例えば、モヘヤとメリノウールのように伸びやすさが違う糸でも、手元でテンションを合わせながら編めます。デメリット
編んでいる途中で、2本の作業糸同士が絡まることがある。◾️1つの玉にまとめて引き揃える場合
メリット
異なる色や段染め糸を組み合わせる場合、色の混ざり方が比較的均一になりやすい。デメリット
2本を一緒に巻く際に片方だけをわずかに引っ張ってしまうと、編み進めるうちにもう一方の糸が大きなループ状に余ってしまうことがある。出典:Knitting Paradise(Knitting with 2 yarns…leave as 2 or combine into one)
この投稿は、「1つの玉に巻くことを全面的に否定している」のではなく、「メリットもあるが、デメリットには注意が必要」と比較している点が興味深いです。
総合すると、日本の掲示板でも、海外の掲示板でも1つの玉に巻かないことをすすめる人が多かったです。
ただここで、プロでもなく、引き揃えて玉巻きをしたことがない私の考えを一つ。
これらの理論から、同じ種類・同じロットの毛糸なら事前に巻いてもいいのでは?とも思います。
同素材・同番手・同ロットであれば問題が起こりにくいのではないかと。
それでも、テンションやねじれの影響を避けるため、別々の糸玉から編む方法を選ぶ人の方が多いのかもしれないですね。
「でも、販売されている引き揃え糸は大丈夫なの?」

ここまで読むと、
「ニッティングバードやITORICOなどでは、引き揃えて玉にして販売されているのに、それは大丈夫なの?」
という疑問を持つ方もいるでしょう。
実は、この記事で紹介しているのは、家庭で複数の糸を後から1つの玉へ巻き直す場合の話です。
販売店の引き揃え糸は、製造や商品化の工程で巻き取られており、家庭用玉巻器で手作業で巻く場合とは条件が異なります。
製造工程の詳細は各メーカー・販売店によって異なりますが、一般的には糸送りや巻き取りを一定の条件で行えるため、家庭で手作業による玉巻きをする場合とは同じ状況とは言えません。
また、販売されている引き揃え糸は、素材や太さの相性を考慮して組み合わせられていることも多く、作品としてそのまま使える商品として設計されています。
そのため、販売されている引き揃え糸と、家庭で好きな2本を後からまとめて玉巻きすることは、別のケースとして考えるのがよいでしょう。
糸玉が転がる・糸が絡むときの対策
別々の糸玉から編む場合は、
- 糸玉を別々の容器へ入れる
- ヤーンホルダーを使う
- コーン巻きを活用する
などの工夫をすると、糸が絡みにくく快適に編めます。
わたしは毛糸玉の場合はこちらの袋に入れています。

編み友がプレゼントしてくれたのでこれが一体なんなのかわからないですが、Amazonで買ったら大量に届いたということでした。
似たようなものでは、三角コーナーに使う水切りネットに毛糸玉を入れている人います。
また、コーン巻の場合はこちらがおすすめです。

これはコーン巻き用に買ったのですが玉巻きの糸にも使えます。
数年前に購入したセリアのキッチンペーパーホルダーですすが、今も取り扱いがあるかは不明です。
同じものを揃えなくても、代代用品はたくさんあるので自分のお気に入りを見つけましょう。
まとめ
- 引き揃え(2本取り)は、別々の糸玉から1本ずつ取り、手元で揃えて編む方法が一般的です。
- 家庭で事前に1つへ玉巻きすると、伸縮率の違いやねじれ、内外周の差などにより、糸が余ったりテンションが不均一になったりする場合があります。
- Yahoo!知恵袋やRedditでの実体験、Tin Can Knitsの著者によるアドバイスも、別々の糸玉から編む方法を支持しています。
- 販売されている引き揃え糸は、家庭での手作業による玉巻きとは条件が異なるため、同じケースとは言えません。
せっかく時間をかけて編む作品だからこそ、糸本来の性質を活かせる方法を選びたいものです。
引き揃え糸は、編む直前に2本を揃える。
ほんの少し手間は増えますが、そのひと工夫が、より安定したテンションと、美しい編み地につながります。
最後に 〜 私自身はどうしているか 〜
ここまで「家庭で事前に引き揃えて玉巻きしない方がよい理由」を書いてきましたが、実は私はまだ一度も家庭用玉巻器で引き揃え玉を作ったことがありません。
理由は単純で、「面倒だから」ですw
そしてもう一つ理由があります。
私は以前から、
「糸って、それぞれ縮絨率や伸縮性が違うよね?」
ということが気になっていました。
引き揃え自体はとても楽しい技法ですが、異なる性質の糸を1本として扱う以上、何かしら影響があっても不思議ではないと思っていたのです。
今回この記事を書くにあたり、Yahoo!知恵袋やRedditなどを読んで「やっぱり別々の糸玉から編む方が安心なんだな」と感じました。
とはいえ、気になっていることがまだあります。
実際に家庭用玉巻器で引き揃え玉を作って、「困った!」という経験をした人は、どれくらいいるのでしょうか。
もし影響が出るとすれば、セーターやカーディガン、ブランケットのような長い距離を編む作品ほど現れやすい気がします。
一方で、帽子やアームウォーマー、バッグなどの小物なら、ほとんど気にならないケースもあるのかもしれません。
このあたりは、実際に経験した方の話をもっと聞いてみたいところです。
もし皆さんの体験談があれば、ぜひコメントで教えてください。
「問題なかった」「こんなトラブルがあった」など、どちらの経験もきっとこれから引き揃えを楽しむ方の参考になると思います。
