ウェアなどの大物を編むとき、仕上がりまでずっと同じゲージを保ったまま完成まで編むことはできますか?
わたしの場合は冬物であれば、まずまずの確率でゲージを保ったまま完成させることができるのですが、夏糸を使ってサマーセーターを編んでいると「別人が編んだの?」と言いたくなるくらいゲージが途中からおかしくなります。
そこで今回はゲージが変わりがちなサマーセーターをキレイに編み上げる方法をまとめました。
この方法はサマーセーターに限らず、同じサイズにパーツを編んでいくカーディガンなどにも応用できます。
ゲージが変わらないようにするには
ゲージというのは編み上げるための編む人の手加減です。
この手加減というのは、機械とは違い人間がやることなので実は結構いい加減。体調や気分によっても変わってしまうくらいに危ういものです。
ですのでよっぽどの職人でない限り、簡単にゲージは変わってしまいます。
せっかく気合を入れてセーターを編もうとしっかりゲージをとっても、編んでいるうちに編み目がきつくなったりゆるくなったりして、思ったサイズに仕上がらないことは誰しもあるでしょう。
でもゲージをなるべく保つコツはあります。
そこでこの記事の本題に入る前にゲージを保ちながら編んでいくポイントをおさらいしましょう。
個人的に気をつけているゲージを保つためのポイント
ここではわたしがこれまでに経験した中で気をつけている、ゲージを保つポイントをまとめてみました。
※これはあくまで棒針編みでのコツです
- 糸を引く力加減を一定に保つ
- 針先で編まない
- 編むスピードを一定に保つ
- その日の編み始めにゲージを確認
それではそれぞれのポイントについて詳しく解説します。
ポイント1.糸を引く力加減を一定に保つ
わたしは右利きでフラン式で編んでいます。この編み方でいうと糸を引く力加減とは左手の人差し指にかける糸の張り加減のことです。
(アメリカ式の場合は右手で針に糸をかける動作に当たるのかな?)
糸を引く力加減はそのまま編んだときにできるループのサイズになります。
糸を強く引けば編み地は小さくなり、緩めに引けば編み地は大きくなります。
この糸を引く力加減を一定に保つことがゲージが変わらずに編み上げることになります。
これが一番大切なポイントだと思います。
ポイント2.針先で編まない
なぜ針先で編むことがよくないかというと、編み地がきつくなるからです。
編み始めは比較的ゆっくり編むので緩めに編むことができますが、慣れてくると手が早くなります。
慣れて手が早くなると針先の細さに合わせて糸を引くようになります。
緩く編むための調整を省くようになり、編み地がきつくなっていきます。
これを防ぐために針先で編まずに、しっかりと針軸が太くなるあたりまで糸を送るようにしましょう。
ずっと針先で編むことがくせになっている人はそのままでもいいかもしれません。
単純に編み地がきつくなるだけなので、標準のゲージに合わせたければ針を太くすればいいだけのことなので。
ポイント3.編むスピードを一定に保つ
編むスピードが変わると糸を引く力加減が変わってしまいます。
わたしの場合はスピードが上がってくると編み地がゆるくなる傾向があります。
それは早く編もうとすることで糸を引く力加減が弱くなるからでしょう。
ポイント4.その日の編み始めにゲージを確認
日をおいて編んだり、長時間編んだりすると気がつかないうちに手加減(糸を引く力加減)が変わっています。
その日の体調であったり疲れ具合であったりで、どうしてもそうなってしまうので、気がついたらゲージをとった時の試し編みと今編んでいるものとを見比べてその時の手加減を確認しましょう。
デザインや糸の太さにもよりますが2〜3段程度なら手加減が違っていても途中で修正すれば仕上がりに大きな影響はありません。
仕上げの水通しやスチームで調整ができます。
以上、上記の4つがわたしが普段から気をつけているポイントです。
気をつけていてもゲージが変わるサマーセーター
前述のとおり普段から気をつけて編んでいても、なぜかサマーセーターを編むとゲージが途中から変わってしまいます。
わたしの場合は、大抵がゆるくなっていきます。
過去にmichiyoさんの著書【やさしく編めてきれいに見えるニットのふだん着】から、右身頃と左身頃で全く同じものを編んで組み合わせるVネックのプルオーバーを編みましたが、見事に左右でサイズが変わっていました。
冬物はあまりゲージが変わらないのに、なぜ夏物だとこんなに変わるのか…。
推測に過ぎないのですが、素材と厚みに原因があるのでないかと思います。
そこで仮説を立てて見ました。
仮説1.冬物の厚みと夏物の厚み
素材は冬ならふっくらした毛糸が主となりますが、夏物は綿や麻になります。
毛糸はふっくらした分厚みがでますよね。
冬物であっても実はゲージが変わっているけど厚みがある分、縦or横に伸ばすことができるので平面で見た場合には違っていることに気がつかない。
夏物は厚みがないですから、厚みの分から縦or横に伸ばすための伸び代がありません。
だからゲージが変わっていても冬物のように調整ができないのかも?
仮説2.素材
素材に関しても考えてみると、麻や綿だと糸と糸の摩擦が強く滑りがよくないから編み始めは糸を強めに引いて編むから編み目がきつくなるけど、慣れてくるとスピードに乗って針が進むから糸を引く力が弱くなる。
これによってゲージがだんだん変わっていって、編みあがる頃には編み始めのものより大きくなってしまう。
仮説をこのように立てたところで、対策は「気をつける」しかありません。でも気をつけたところでどうしてもゲージがだんだんおかしくなってくる。
ならばゲージが変わっても作品が仕上がるように編み方をちょっと変えてみることにしました。
ゲージが変わっても仕上がりに影響でない方法
ゲージを保つための4つのポイントは守り続けた上で、夏物はゲージがだんだんとおかしくなる現実を受けいれていくことにします。
前回失敗した【やさしく編めてきれいに見えるニットのふだん着】のVネックプルオーバーは、左右の身頃を全く同じ形に編んで組み合わせるデザインで、左右のサイズが一回り分くらい仕上がりサイズにズレが生じました。
これだと左右の重さも変わってしまうので着用すると体が歪み肩がこるので健康にもよろしくないです。
同じ形のパーツの仕上がりサイズが変わってしまうことが問題なので、だったら同じ形に編むパーツは同時進行すればいいんじゃない?
ということで、実際にそのように編んでみることにしました。
同じものは同時編む
今回もmichiyoさんの著書からサマーセーターを編むことにします。
編むのは【パターンが楽しいニットのふだん着】からチルデンセーター風のVネックプルオーバーです。
前身頃と後身頃で全く同じもの2枚編んで組み合わせるデザインなので、同時に編んでいく方法を試すことができます。
画像が同時進行で編んでいる身頃です。
同時進行というのはどういうことかと言うと、例えば10段編んだらもう一つを10段編んで…。
というように進捗具合を同じようにしていくことです。
このデザインは12段で1模様なので、前身頃を12段編んだら次は後身頃を12段編む。
これを目標の段数まで繰り返します。
この方法で完成させたのがこれ↓です。
ゲージがだんだんおかしくなってきているとしても、前身頃と後身頃の両方が同じようにゲージがおかしくなっていれば、前後の仕上がりサイズに差がでないので問題ないです。
編んで作品を売るような仕事を目指しているのなら、こんな的当な対策ではなくゲージを保ったまま完成させる技術を身につけるべきですが、わたしのようにただの趣味ならば編んだ本人が納得すればいいのです。
わたしはこれでよしとします。
試す価値あり 同時進行編み
一つの作品をどのように編んでいるかは人それぞれです。
すでにこのように同じパーツを一気に編んでいる人はいると思いますが、わたしの様に一つ一つ順番にパーツを編んでいる人も多くいるでしょう。
例えばカーディガンを『後身頃→前右身頃→前左身頃→右袖→左袖』というようにパーツを一つ一つ順番に編んでいて、最初のゲージと仕上がりのゲージがずれてきちゃう人は『左右の前身頃を同時に、身頃が終わったら左右袖を同時に』というように、編む順番を工夫してみてください。
同じサイズに仕上げるべきパーツが同じサイズに仕上がっていれば、使い物にならないという一番悲しい自体は防げます。
ゲージを保つためのポイント 追記
今回編んでいて、もう一点ゲージを保つためのポイントに気づきました
それは「編み散らかしていない」ということです。
いつものわたしなら同時に3つくらい別のものを編んでいるのですが、今回はVネックプルオーバーを編み始めたらこれだけを編んでいました。
これも結構なポイントになりそうですよね。
改めてゲージを保つためのポイントをまとめます。
- 糸を引く力加減を一定に保つ
- 針先で編まない
- 編むスピードを一定に保つ
- その日の編み始めにゲージを確認
- 編み散らかさない ← NEW!
今回のノウハウが編んでいるうちにゲージが変わってしまって悩んでいる人の参考になったら嬉しいです。