前回の【初心者でも簡単な編み物No.1はネックウォーマーと言い切る2つの理由】という記事で編んだネックウォーマーをInstagramに投稿したところ、「太糸カウルいいですね」とコメントいただきました。
ん?カウル?
わたしはネックウォーマーを編んだつもりでいましたが、フォロワーさんからはカウルと言われる。
はて、ネックウォーマーとカウルって、何が違うんだろ?
あれ?スヌードも似てるよね?
と、当たり前にこれまで編んできた作品が一体なんだったのかわからなくなってきました。
そこで今回は、なんだか良くわからない首に巻くものがそれぞれ何に当たるのか、ネックウォーマーとカウルとスヌードの違いについて調べてみました。
ネックウォーマーとカウルとスヌードについて
調べたけど明確な答えは見つからなかった。
答えは見つからなかったけど、我が家にある参考書籍とgoogle先生の情報から、以下のようにまとめました。
ネックウォーマーとは
ネックウォーマーをアパレルの辞書で調べてみると、驚くことに正式な定義を載せているものがありませんでした。
昔からある言葉ですが、単なるカタカナ語として使われているだけで、言葉以上の意味はないので定義をする必要がないのかもしれません。
ネックウォーマーとは、首を温める衣料品全般を指す言葉で、カウル や スヌード、マフラーなどの防寒具の総称です。
首を温める衣料品のなかで、正式な定義に漏れてしまったアイテムはこれに該当します。
デザインの分類に迷ったら、ネックウォーマーと言っておけば間違ではないでしょう。
図解を描いてみました。
カウルとは
ゆったりとしていてドレープ感のある、ネックウォーマーの一種です。
カウルの語源はラテン語の「cucullus = フード」で、古代ローマではフード付きマントを指す言葉として使われていました。
それが教会ラテン語で「cuculla」になり、主として「修道僧が用いるフード付きの袖なしマント」を意味する様になりました。
近代になって婦人服で胸元の襟にひだを作り、優雅さを表現する襟が生まれた時、僧のカウルに似たものとして比喩的にカウルネックと呼ぶようになりました。
ドレープネックとカウルネックが同義であることから、首回りにゆとりがあり、ドレープが表れる広い帯幅の輪状のネックウォーマーをカウルと呼びます。
これらをまとめると、カウルと呼べるものの条件は以下のようになります。
フードが付いている又は、
フードになるくらいの分量感があるもの又は、
身頃が部分的に付いているもの
絵を描いてみました。
スヌードとは
スヌードに関しては情報取集の仕方が悪いのか、カウルほどの情報を集めることができませんでした。
語源は印欧祖語の「(s)ne-=回す、縫う」で、古英語時代に「ヘアバンド」の意味で使われています。
鉢巻やヘアバンドを語源としているため、スヌードと呼べるものの条件は以下のようになります。
首回りのゆとりは少なく、ドレープのない輪状のもの
つまり、ややぴったり目で帯状のネックウォーマーがスヌードということになりますね。
絵に描いてみた。
腑に落ちない。
調べて気づく認識の違い
ここまで調べてわたしは違和感を抱きました。
これまでの漠然としたイメージだと、三種はすべて輪っかになっている。
その中でぴったり目のものがネックウォーマーで、ネックウォーマーよりちょっとボリュームがあるものがカウル、もっと長い輪がスヌードでした。
わたしが編んだネックウォーマーは、今回調べた定義に当てはめるとスヌードになります。
なぜこのように、認識の違いが生まれているのか。
探ってみると過去に編んだもので「こういうものがスヌードなのか」という知識の元になっている作品があります。
それは【おでかけニット vol.3 (別冊家庭画報 手編み時間)】に掲載されているアラン模様のスヌードです。
この作品は今回調べたことを元にカウルなのかスヌードなのか、条件を当てはめるとカウルになりそうなのですが…。
でも、フードになるほどの幅はないんだよね。お手元に同じ本がある人は見てください。どう思いますか?
言葉は変化する
今回参考のメインとなった書籍はファッション/アパレル辞典(繊研新聞社)で、この辞典は初版が2004年です。
目まぐるしくあらゆるものが変化している近年では、16年前の情報は古い情報の部類になります。
「もともとはこうだったけど、今ではこうなった。」ということはよくありますよね。
アラフォーのわたしで例を挙げると、昔はスパッツと呼ばれていたものが近年ではレギンスと呼ばれるようになりました。
ファッションに限らず食べ物でも、子供の頃はデザートと呼ばれていたものが、今ではスウィーツだったりドルチェだったり。
今回調べた、カウルとスヌード、ネックウォーマーは元は何であれ、現代ではファッションアイテムです。
ファッションと言う言葉そのものが「流行」という意味です。
流行とは時の流れとともに変化します。
「これはこういうもの」と当てはめようとしないで、「これはこういうものだと認識する人もいるんだな」とゆるく考えるくらいでいいのかもしれないですね。
まとめ
世間ではわかりませんが、我が家ではこのように答えを出しました。
輪に編むネックウォーマーのうち、柔らかく優美なドレープ感をもつフードにもなるくらいゆったりとしたものをカウル。しっかりとしていてドレープがなくぴったりめのものがスヌード。
ただし、どちらにも当てはまる(または、どちらにも当てはまらない)デザインが出てくることは多々あります。
その時は「デザイナーがそういうなら、それ」です。
言葉の定義というのはそもそも誤訳されて伝わっていることもあるし、訳すときにぴったりと同じ意味の言葉がないこともあります。
それならば無理にカテゴライズすることでもないですよね。
パターンを探すときには、無理にカテゴライズすると世間と自身の認識のズレから有用な情報を逃してしまう可能性がありますから。
結論としては
明確な答えはない。
でも、その人がそう呼ぶならそうなんだ。
です。
今回はこのように締めることにします。
皆さんはどう思いますか?
参考:ファッションアパレル辞典(繊研新聞社)、最新ニット辞典(チャネラー)、JISハンドブック2018 31 繊維