褒めたつもりが「ブロック」される悲劇
SNSで流れてきた素敵な編み物作品に感動して、「編み方を教えてください!」とリプライを送ったら、投稿を削除され返信どころかブロックまでされてしまった……。
何がダメだったの?
という、残念なできごとの投稿を目にしました。
もしあなたが作り手側だとしたらどう思いますか?
わたしはそのブロックされてしまった人とやりとりをしたのですが、本当に悪気はなかったようでした。
※この投稿は現在削除済みのようです。
しかし、編み手の視点から見ると、その一言は「時間と技術をタダで差し出しなさい」という搾取の言葉に聞こえてしまったのではないかなと思います。
実際わたし以外のリプライでは「それはクレクレだよ」という指摘も多かったです。
ではどう伝えたらよかったのでしょうか。
「編み方」と「パターン」は、全く別のものです

“パターン”と“編み方”の違いが解らなかったことが、コミュニケーションのズレを生む原因になったのではなないかな、と思います。
この二つには「商品」と「脳内プロセス」ほどの差があります。
パターン(または編み図)とは誰でも再現できる「完成されたレシピ」
「パターン」とは、第三者が編んでも同じ形になるように、目数や段数を計算し、誰にでもわかる言葉や記号で清書された「設計図」です。
これを作るには、実際に編む時間の何倍もの検証とデスクワークが必要です。
だからこそ、パターンは対価を支払って購入する「著作物」なのです。
編み方は作家の「脳内にある未整理のメモ」
これはわたし自身をもとにしているので、必ずしもオリジナル作品を編んでいる人すべてに当てはまるとは言い切れないということを前提にお話しします。
パターン制作をしていない人のオリジナルの作品である場合、パターン化されていることはあまりないです。
多くの場合は作家の「その時の感覚」や「自分だけがわかる殴り書きのメモ」、あるいは「手が覚えている技術」の塊です。
もし「編み方を教えて」と言われたら、作家は自分の頭の中にある断片的な情報を、あなたに伝わるように整理し、言語化し、マニュアル化し直さなければなりません。
それは「無報酬で、一から教科書を書き上げてプレゼントしてください」と頼んでいるのと同じことで、仮に作家自身のためにレシピ化されていたら「パターンをタダでクレ」と言っているようなものなのです。
と、ちょっと厳しめに言いましたが、作家の中にはパターン作成や販売をしておらずとも、動画で編み方を紹介している人もいますので、その場合は「動画作るから待ってください」とか答えてくれるかもしれませんね。
だとしても、やはりスマートなアプローチ方法はあると思いますので、後ほどまとめます。
相手に「対価を支払う」気持ちはありますか?

「教えて」と軽く口にする裏側に、相手へのリスペクトは含まれているでしょうか。
ちょっと想像力を働かせてみてください。
以下のことが理解できたら気軽に「編み方教えて」とは言えないのではないでしょうか。
教えることは「労働」である
人に教えるには、膨大な時間とエネルギーが必要です。
相手が初心者であればなおさらです。
文章が良いのか、動画が良いのか。
どの程度専門用語を知っているのか。
見ず知らずの人に教えようとなった時、ここから考えないといけません。
文章をまとめるのも結構大変だし、動画なんて撮影環境が整っていないと無理ですよね。
教えるという行為は、相手の貴重な時間を『差し出させる』ことでもあり、「教育」という仕事であり、本来はレッスン料が発生するものです。
SNSは「無料相談所」ではない
SNSには優しい人がたくさんいます。
ちょっと困ったとき、どう調べたらいいか分からないとき、SNSで「教えて。」と言えば教えてくれる人がたくさんいます。
しかしその優しい人の時間を、自分の質問のために使ってくれているという感謝の気持ちはありますか?
優しい人も、度が過ぎれば突き放すこともあります。
その手段がブロックや投稿の削除です。
ただまぁ、その【度】というのは人それぞれなので、どこまでOKでどこからNGかはわかりません。
ブロックされてしまったら「あぁ、やりすぎたかもな」と、自分の発言を振り返りましょう。
「教えて」と言いたくなったときの、正しいアプローチ

そんなに言われたら何も聞けないじゃん!
と思うかもしれませんが、言葉の一つで相手への印象は変わります。
ここでは相手に嫌がれないような、思いの伝え方を考えてみましょう。
1.まずは自分で調べる
プロフィール欄に販売サイトのリンクや、編み方の紹介をしているYoutubeのチャンネル名やリンクがないかを確認しましょう。
また、その人自身のデザインではない場合、投稿文内やハッシュタグにデザイン名、パターン名があることが多いです。
それを拾って検索しましょう。
2.聞き方を変える
「編み方を教えて」ではなく、「その作品のパターン(編み図)はどこかで販売されていますか?」と尋ねます。
これによって、作家はデザイナーに“タダで”要求しているわけではなく、相手にリスペクトが伝わると思います。
「パターンはここです」とか「パターンはないです」と答えやすくなります。
SNSでは文字のコミュニケーションですから、相手も返信がしやすい聞き方をするとよいと思います。
3.断られたら深追いしない
「自分用に編んだだけなので、公開していません」と言われたら、潔く引き下がりましょう。
同じようなものがどうしても編みたくなったら自分で再現をしてみるのも楽しいですよ。
まとめ:敬意こそが、編み物文化を豊かにする
これは決まり事(マナー)の問題ではありません。
相手がその一目を編み出すために積み重ねてきた「時間」と「技術」への、純粋なリスペクトの問題です。
「素敵だな」と思ったら、まずはその作品が生み出されるまでの背景を想像してみる。
その一歩があるだけで、SNSはもっと心地よい場所になるはずです。
【作り手側のみなさんへ】
この記事は、「教えて欲しい」と言う方に向けて「クレクレになっていないかな?」と振り返るための内容ですが、もし今後、編み図の販売や作家活動を始めるなら、自分自身を守る工夫も大切です。
「パターンは販売していません」「制作に関する個別の質問はお受けしていません」といった境界線をあらかじめプロフィールや投稿に明記しておくのも、自衛策です。
作り手も楽しみ手も、お互いが気持ちよく過ごせる環境をどう作るか。そのヒントとして、過去にまとめたこちらの記事も参考にしてみてください。

