編み物はお金がかかります。
道具や材料の費用はもちろん、教室や通信教育を受ければ教育費もかかっていますよね。
そして編めるようになるまでに時間もかかります。
デザインができない。
編み図もパターン作れない。
そんなわたしでも素晴らしいデザインの作品を編むことができるのは、お金と時間をかけて学んでスキルや知識を身に着けてきたクリエイター、テストニッター、校正・校閲担当者、編集者、出版社などたくさんの人のおかげです。
この記事では著作権のことや、編み物に関するやって良いことと、悪いことを考えてみます。
編み物に関するやって良いこと・悪いこと
ニットに限らず世の中にはたくさんのデザイナーがいます。
わたし自身も広告業界でデザイナーをしていたことがありました。
だからこそ言いたいのです。
「デザイナーの収入を減らすことをしてはいけいない。」と。
つまり著作権とか知的財産権を守ろうという話ですが、わたしは法律については難くてよくわかりません。
ですがやってはいけないことは経験として知っている部分はありますので、身の回りで見たり聞いたりした、よくあるNG例とOK例を挙げていきます。
悪いこと1.編み物の本の作品を編んで売る
これはNGです。
ここ数年ハンドメイドが流行してアプリや専門サイトで、自分で作った制作物が誰でも簡単に販売ができるようになりましたが、「編んだ作品は販売禁止」と記載がある書籍の編み図で編んだものが売られています。
おそらく販売している人は、その本に掲載されている作品を編んで販売したらいけないことを知らないのだと思いますが、しっかりと本の最終ページに書いてあります。
本書で紹介した作品の全部または一部を商品化、複製頒布、及びコンクールなどの応募作品として出品することは禁じられています。
販売というのは上記の商品化にあたります。
訴えられたら民事上のペナルティも刑事上のペナルティも科せられるかもしれません。
悪いこと2.誰かのデザインの編み図を販売・配布
これもNG。
先日海外にも名が知られたデザイナーさんのワークショップに参加したとき、デザイナーさん本人が無断転載されたと言っていました。
無断転載というのは簡単に言うと、デザイナーさんの編み図や本を、ショップなどの正規のルートで入手した後に、別の人に配布することです。お金を取っても取らなくてもやってはいけません。
このデザイナーさんの本にもしっかり書いてあります。
本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は著作権法上での例外を除き、禁じられています。
本書を代行業者等の第三者に依頼してスキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違反になります。
無断複製が禁じられている場合でも自分のためのコピーはとっても良い
編み図のコピーを取りたい場面はよくあると思います。
しかし上記のとおり『本書のコピー、スキャン〜略〜禁じられています。』とあります。
ならば「コピーをとること自体がNGなのか?」という疑問がわきました。
さらに、『著作権法上での例外を除き…』ともあり、
例外って何!?
という状態なのですが、その例外が一体何なのかはさておき、コピーを取っても良いかについて考えました。
そして出した結論が「自分用ならOK」です。
コピーに関してNGになるかどうかは、『〜代行業者等の第三者に依頼して〜』という文言がポイントです。
この『代行業者等の第三者』とは本書を正規のルートで入手していない人です。
例えば、わたしが業者に印刷を依頼すると編み図を含めた本の内容が業者に漏れることになります。
仮にその業者が悪い人だったとしたら、わたし以外の人に印刷したものを配布したり販売することができてしまいますので、このような事態にならないようにするための注意書きだと思います。
これは先日のワークショップでデザイナーさんや他の参加者のみなさんで話した結果こう解釈しました。
※法律の素人の集まりで出した答えです。専門的な知識をお持ちの方がいましたらコメントください。
すると自宅で自分のためにするコピーは問題ないということで良いですよね。
実際私も本に直接書き込みはしたくないので編み図のコピーを取って書き込みをしていますし、デザイナーさんもそれを見ていて何も言わないので、多分そういうことです。
悪いこと3.SNSで買った本の画像を投稿する
これはNGですが、黙認されているのが現状です。
出版社の許可により本の表紙はOKの場合もありますが、中身はNGです。
↓こちらの記事でも少し触れました。
『公衆送信権侵害』にあたります。
出版社(または著者)の許可が取れていればOKということですが、世にあるたくさんのブログやSNSで「この本買いました!」という表紙の画像付きの投稿を見かけますが、みんなが出版社の許可を得ているとは思えません。
無許可でインターネット上に本の画像を載せることはやっていけないことだと知らない人は多いでしょう。
出版社側が本の画像が無許可でインターネット上で公開されている現状を把握しているかどうかは不明ですが、おそらく黙認しているのだと思います。
黙認しているのは不利益になるわけではないからでしょう。
わたしも出版関係の会社に務めたことがありますが現状は黙認です。
しかしトラブルに発展しないとも限らないので気をつけましょう。
やっても良いってどんなこと?それはどこかに明記されている
やったら悪いことをおさらいするとこんな感じになります。
- 編み物の本の作品を編んで売る
- 編み図を販売・配布する
- 本の画像をインターネットで公開する
しかし、場合によっては販売・公開元が許可している場合もあります。
そういう場合は『パターンを売るのはNGですが、配布するのはOKです。』というような注意事項が書いてあります。
やっても良いこと・悪いことはこちらにわかりやすくまとめてあります。
ぜひ見てください。
編み物の著作権についてユーチューバーの訴訟問題から思うこと
ここまでは誰かの著作権を侵害する側の立場で考えてみました。
次は著作権を主張する側の立場で考えてみます。
ユーチューバー訴訟問題のざっくり解説
編み物ユーチューバーの訴訟問題は、編み物をしない人たちの間でも話題になったので知っている人も多いでしょう。
経緯は省きますが簡単に言うとユーチューバーAが、ユーチューバーBに対して著作権を主張し、動画を削除させたが、Bが不服を申し立て裁判に発展。
判決は動画の削除要請をしたAが敗訴。
編み物の技術や手法には著作権がないということになりました。
そしてAはBに慰謝料と広告収入の損害など計約7万円の支払いを命じました。
詳しい流れは検索したらすぐに出るので興味がある人は調べてみてください。
自分が思っている以上に著作権は発生しないかもしれない
ユーチューバーの訴訟問題は、最初に著作権を主張した側が返り討ちにされてしまったわけですが、もし著作権の有無についてあらかじめ調べておけば、こんなことにならなかったわけですよね。
また別の例ですが、とあるニットデザイナーが盗作だとSNSで騒がれたことがありました。
そのニットデザイナーと盗作を訴えた人は師弟関係にあり、弟子が師匠にデザインについて相談した後に、弟子が相談時に見せたデザインと似たパターンを師匠がリリースしたことから「わたしのデザインを盗んだ!!」となりました。
相談後にパターンがリリースされたことが盗作だと主張する根拠でしたが、客観的に聞いて「相談した日からパターンのリリースまでの期間を考えたらその主張は無理があるし、そのデザインはそのときの流行りだったこともあり、盗作と主張するには無理がある」と思いました。
その騒ぎはどのように収束したのかはわかりませんが、著作権を主張する側の認識がずれていることも多いかも知れないと思いました。
権利や法律については難しく、コレには著作権は発生するのかまで掘り下げるのは時間がかかってしまうので、わたしはしませんが、こちらの方がわたしより踏み込んで考察してくれています。
編み物および編み図について著作物性が否定されたという事例は確かにあるようです。
だからと言って安易に「だったら編み図のものを編んで売ってもいいんじゃん」と考えずに、ごくシンプルに「やめてください」と言われているならやめましょう
当記事の最後に紹介している別の記事【見直しましょう!ニッター&クロシェッターとしてのモラルとマナー】にも目を通していただければ、なぜわたしがそう思うのかをわかっていただけると思います。
そして、上記で紹介したURLの記事も、わたしより踏み込んだ考察をしているとはいえ、わたしと同様に法律の専門家ではありませんのでトラブルになりそう、またはなったらきちんと専門家に相談するのが良いでしょう。
編み物ライフを楽しむために
デザイナーがデザイナーとして収入を得られるようになるまでにたくさんの投資をしています。
制作物を作るための材料や道具の費用だけではなく、勉強をしてきた何年もの時間も投資の一つです。
デザイナーは楽しいイメージが強いかも知れません。
実際デザインで悩むことは楽しいです。でも、ラクではないのです。
納期や素材の縛り、さらには一緒に仕事をする人間関係などの要素が加わると、好きなことを仕事にしているとは言え辛いことだってあります。
たくさんの投資や苦労の上で出来上がったデザインが、タダで世界中に出回ったらどうでしょうか。
お金にならなくなったらどうでしょうか。
「もうデザインしてもお金にならない。生活できない。デザインやめよう。」となってしまうかも知れません。
大好きなデザイナーがデザインをしなくなったら寂しいですよね。
そうならないように、法律を調べたり難しく考えるよりも、少しでもデザイナーのことを思って「今から自分がすることはデザイナーの不利益にならないだろうか」と考えてみましょう。
また自分が著作権を主張したい場面においても、本当にそれには著作権が発生するのかを考えましょう。
生きている限りは、誰かの影響を受けます。
「わたしのアイデアを盗まれた!」
と思う場面に遭遇するかもしれませんが、デザインもアイデアも、過去の誰かの何かを見て閃いたものの方が多いです。
SNSで騒ぎ立てる前に、著作権の侵害を主張する前に、一度立ち止まって著作権の有無を確認することも必要です。
簡単にインターネットで世界中に情報を発信することができ、制作物を販売することができる便利な時代だからこそ、やっても良いこと・悪いことを日頃から意識することが大切ですね。
さて、当記事では著作権のことも交えた、「やって良いこと・悪いこと」を考えてみましたが、権利や法律など難しいことを考えないでも、立場を変えて少しの想像力を働かせたら自然と「やって良いこと・悪いこと」が判断できると思います。
という内容の記事も書いてみました。
ぜひともニッター・クロシェッターとして、「この行動はどうなんだろう?」ということを考えてみてください。
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